【新規開業体験談】先行きの見えないコロナ禍の眼科開業 | 株式会社クリプラ

【新規開業体験談】先行きの見えないコロナ禍の眼科開業

  • CLIPLA Eye
  • コラム
  • 新規開業

コロナ禍の2020年4月に神奈川県大和市に、「中央林間やまかわ眼科」を開業された山川 弥生先生に新規開業についてお伺いしました。 開業の苦労工夫された点などお話いただきましたので、以下対象となる方は必見です。 

 

対象者 

・新規開業を考えている方
・設備投資を抑える工夫、患者さんに合わせた広報活動について知りたい方

 


 

開業は自分に向いている働き方を考えた結果の選択

2020年4月に神奈川県大和市に、中央林間やまかわ眼科を開業しました。緑内障の専門外来に勤務していましたので緑内障患者さんの来院が多く、日帰り白内障手術・硝子体注射・ボトックス注射なども行っています。視機能訓練士が常勤2名、非常勤2名在籍しており、小児眼科にも対応していますが、近くに小児眼科があることから高齢の患者さんがメインで来院されています。

私ははじめから開業の意思があった訳ではありませんでした。しかし、開業した医局の先輩の施設を見学したり、経験談を聞いたりする中で、自分に向いている働き方は開業なのではないかと意識するようになりました。医局の先輩は開業される方が多く、段々私と年齢の近い先生が少なくなっていく中で、自分でやれる範囲のクリニックで定年なども気にせずに働きたいと思うようになりました。ある程度の年齢で独立しないと資金繰りなどの問題も出てくるので、悩んでいるならやってみようと開業することにしました。開業地については、出身が大和市ということ、数年前から中央林間眼科の先生に「閉院するから患者さんを引き継いで欲しい」という依頼をいただいていたことから、大和市の中央林間に決めました。

 

出来るだけ多くの施設を見学することが重要

開業を決めてから施設の見学、開業セミナーの受講、眼科で開業された先生の本を読むなど、3~4年と比較的長い期間をかけて準備を進めていきました。

特に施設見学には力を入れました。内覧会があると必ずと言ってよいほど顔を出し、どのような運用をしているのか、スタッフの人数や働き方、WEB予約は導入しているかなどを見て、良い所は取り入れたいと思っていました。中でも施設の間取りとスタッフの動きはよく見ていました。間取りが良くないところだと、スタッフや受付表の動線が長くなり、患者さんの待ち時間を増やしてしまうことに気づきました。反対に受付表の置き場所や間取りが良いと、受付表が置き去りにならず、誰がどう捌けば良いか明確になっていてスムーズに流れていきます。

スタッフの対応は勉強になるところが多かったですね。受付から診療室前の待機場所まで丁寧に誘導するスタッフがいる施設もあれば、逆にあまり説明をしない施設もあります。説明が不足していると患者さんが待機場所におらず、先生が診療室に呼び込みしないといけないこともあります。また、優秀なスタッフの教育方法について聞く機会もあり、参考にさせてもらっています。

*見学可能なCLIPLAユーザーはこちら!

ユーザー見学会実施中!眼科専用電子カルテ「CLIPLA Eye」

開業については、もともと働いていた医局で長く付き合いがあった業者さんに支援をお願いしました。信頼していたことが一番の理由です。新たに開業支援業者を探すことも考えましたが、信頼関係ができていないまま任せることができるのか、費用を掛けた分の効果が得られるのかといった心配もありました。開業のテナントについてもその業者さんから紹介いただきました。

 

設備投資を抑えるための数々の工夫

緊急事態宣言のタイミングで開業となり、高額な設備投資はとても不安でした。テナントは内装工事が始まる前から借りる契約なので、開業前から費用が発生します。コロナを理由に開業を延期してもテナント料は発生していますし、開業の1ヶ月前から研修もあり、スタッフの給与支払いも始まります。そのため費用は極力抑えたいと考えていました。対策として、使用頻度が高くないものは中古を、電子カルテはクラウド型の「CIPLA Eye」を選択しました。

ほとんどの機材は新品ですが、レーザーや顕微鏡は中古にしました。経営が軌道に乗ったら買い替えようと考えています。電子カルテは医局で使い慣れていたオンプレミス型の電子カルテがあり、それが良いと思っていましたが、オンプレミス型の電子カルテはどうしても初期費用が高額になってしまうため、最終的には費用を抑えられる「CLIPLA Eye」を選びました。カルテによって収益が得られる訳ではないので大変助かりました。これらの対策により、初期投資を1,000万円は抑えることができ、結果として最初に想定していたより少額の融資で済みました。開業から2年経過して、患者さん、スタッフの人数も増えました。現在では合計12台のパソコンを設置していますが、「CLIPLA Eye」はパソコンを購入すれば追加費用なく台数を追加できるので、その点も有益でした。

 

最も苦労したのは採用

今ではスタッフに恵まれていますが、開業時に一番苦労したのが採用でした。当初、視能訓練士の採用については有料サイトに掲載しましたが、結局、日本視能訓練士協会HPからの応募がほとんどでした。

面接は会場を1日借りて集まってもらい、その日1回で決めました。有料の採用サイトに載せると2週間ごとに費用がかかるため、採用する人材は早めに決めました。しかし、早すぎたことが裏目に出て、コロナの影響で開業までに決起会などを開催できなかったこともあり、2ヶ月会わない間に採用したうちの2名が辞退してしまいました。資格保有者は市場での需要が高く選択肢が多いため、良いところがあればすぐに働き始めてしまうケースは少なくないようです。

急いで追加募集を行い、熟慮せず未経験の人を採用しました。その間も勤務医として働いていたので勤務後に喫茶店で面接をするのは大変でしたし、採用が長引くと費用がどんどん膨らんでいくので早く終わらせたいという思いがありました。他の準備もあり時間がなかったため、人数が揃っていればなんとかなる、と判断してしまいましたが、スタッフがどんな風に働いてくれるかが開業後重要なので、もっと真剣に考えた方がよかったと反省しています。

 

人柄も経験も重要

開業セミナーでは、同じクリニックに長く勤めていた人は以前のやり方に固執するケースが多いという理由で、とにかく人柄を重視した採用を勧められることが多かったです。また、開業前の研修期間で教育できるので、経験はさほど重要ではないという話を聞くこともありました。私もそれに倣って、面接時は「人当たりが良いか」というところばかりを気にしていましたが今になってみると、経験も重要だと思います。

例えば、医療事務の求人に対しては様々な職種の人の応募があり、採用に経験は重視していませんでした。勤務医時代の経験からレセプトの内容の理解はしており、経験者がいなくても大丈夫だと思っていました。クリニックの運営において、院長の携わる業務は多岐にわたり、受付業務に関わっていける時間は限られます。一人は核となる経験者がいないと難しいことを、開業後に実感しました。

 

患者さんに合わせた広報活動

ありがたいことに勤務地近くに開業した事もあり、開業直後から沢山の患者さんに来院していただけました。しかし、未経験のスタッフがほとんどだったこともあり、1ヶ月の研修では不十分でした。また、電話対応に時間を取られることが多かったのは想定外でした。WEB予約は開業時から入れていたのですが、8割が高齢の患者さんということもあり電話での予約が多く、最初のうちは「場所がわからずたどり着けない」という電話対応に追われることもありました。それもあってHPの道案内はかなり詳しく記載するようにしました。看板も、デザイナーさんに頼んでおしゃれにしていただいたのですが、近くに来ても気づいてもらえないことが多かったので、わかりやすさを重視して色彩をはっきりさせるなどの工夫をしても良かったと思っています。

また広告の費用対効果を確認するために、新規の患者さんに「何を見て来院しましたか?」というアンケートをとったところ、若い患者さんに対してはオンラインのWEB広告、高齢の患者さんはオフラインの看板・口コミ・知り合いの紹介が来院のきっかけになっていることがわかりました。来院される患者さんの年齢層によってどこに費用を掛けるのか考えた方が良いと思います。

 

開業は苦労も多いが、その分やりがいもあります

開業時に緊急事態宣言になってしまったために、スタッフには15時~16時には帰宅してもらっていましたが、全然仕事が終わらず、私は毎日出勤していました。ちょうど子どもの学校が休みになり、家族が手伝いに来てくれたのですが、あの頃は本当にパニックでした。

どの先生も開業してから最初の数ヶ月は「開業しなければよかった」と言うらしいです。3年から5年で落ち着いてくると言われているようですが、私もまだ心休まることはないです。勤務医のときは完全に仕事を忘れる瞬間がありましたが、開業してからは休日でも銀行に行ったり、書類を整理したり、やらなければならないことが何かしらあります。自営の場合、自分で意識しないと休息できる時間がないですね。

ただ大変なことも多いですが、やりがいは大きいです。勤務医だとどんなに必死にやっても所属する診療科に予算をつけてもらえなかったり、自分の頑張りだけではどうにもならないことがあります。開業すると自分がやったことが患者さんの反応も含めて全部自分に返ってくるので、そこが魅力だと思います。